教室員の風景

2012年6月

医局長の木村です。今回は、滋賀医大産婦人科の診療体系、特徴についてお話をさせていただきます。産婦人科というとまずお産のイメージが強いと思います。しかし、実際の産婦人科の携わる領域はそれだけではなく、婦人科腫瘍、生殖医学、女性ヘルスケア(骨盤底医学を含む)などがあります。これらの分野の内容を順に述べていくと子宮筋腫などの良性腫瘍、子宮がんなどの悪性腫瘍に対する治療を行う分野、女性ホルモンのバランスを崩した状態の治療やなかなか妊娠に恵まれないカップルに対して治療を行う分野、閉経後の女性に特有のホルモン状態や子宮が下垂してしまっている状態などに対し治療する分野と言えます。このようなことから産婦人科医の仕事は、すべての年代の女性に関連しいわば女性の健康維持に一生関わるとの考え方が定着してきています。また、その女性(患者)の年代、状態などによりその分野の専門性の高い医師が治療を担当することとなってきています。医学の進歩に伴いその一つ一つの領域において必要とされる知識量は膨大となり、また高い技術が要求されるようになってきました。このような流れはどの診療科にもあてはまりますが、より狭い専門分野の学会が形成されてきています。このようなことから医師となりある程度の知識や技術を習得した後は(我々はこれを一般診療と言います。)、より専門性の高い分野(サブスペシャルティー)の知識、技術をもつようになっていきます。
 滋賀医大産婦人科は、現在5部門の専門分野で患者さんの治療にあたっています。産科、婦人科腫瘍、生殖医学、女性ヘルスケア、そして内視鏡下手術です。産科、婦人科腫瘍、生殖医学、女性ヘルスケアに関してそれぞれを専門とする複数名の医者が在籍しています。診断から治療まで一貫して行い、入院した場合は病棟医長や研修中の医師と協力して治療を行っています。専門分野としての内視鏡下手術は、他の4部門が扱う患者さんの状態や病気の種類によってわけられているのに対し治療する方法論です。しかしながらその手術のためには熟練を要し、その専門医制度ができるほどの専門分野となっています。当然、我々の教室にも村上教授を始め内視鏡を専門とする医師がいます。滋賀医大産婦人科では、この内視鏡下手術を一般診療の一部と考え、卵管および卵巣の病気に関しては医師の専門性を問わず、すべての医師が手術に入るようになっています。異所性(子宮外)妊娠や卵巣腫瘍による急激な腹痛はいつ起こるかわかりません。このような状況に対応するためには24時間対応で手術できる体制を作る必要があります。もちろん内視鏡で手術が困難と予想された症例に関しては、開腹術で手術することもありますが、できるだけ侵襲(体に与えるストレスが少ない)の少ない手術ができるように独自のプログラムを作成してみんなでトレーニングをしています。別の言い方をすると滋賀医大産婦人科に在籍する医師は、サブスペシャルティーに関わらず内視鏡下手術を修得していくことになります。
 このように滋賀医大産婦人科の特徴は、すべての専門分野各々に習熟した医師が複数名在籍し診療していること、また、特に腹腔鏡には力を入れ医師全員が取り組んでいることだと言えると思います。