教室員の風景

2016年11月

「有袋類に会いに」

はじめまして。
11月になり、朝夕めっきり寒くなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今月の教室員の風景は、最近花粉症に悩まされている専攻医1年目の堺淑恵が担当します。
京都で生まれ育ち大学からこの滋賀にやってきました。大学では陸上部で長距離走や槍投げをしたり軽音部でドラムをしたり、アカペラサークルで歌ったりと毎日忙しく部活動に勤しんでおりましたが、今年度入局してからはドラムスティックや槍やマイクを、メスや超音波プローベやクスコに持ち替え、優しく、時に厳しく指導して下さる先輩方に支えられながら、日々勉強させて頂いております。
この7か月間は毎日必死で物凄い早さで過ぎ去った印象ですが、気づけば多くの症例を経験させて頂き、また上級医の先生方がお忙しい中なにかと時間を作って授業をしてくださったり、腹腔鏡手術のトレーニング方法を教えてくださったりと熱心に指導してくださるため、とても充実した研修を送れています。まだまだ至らない部分ばかりですが、できることを一つずつ増やして少しでも早く皆様のお役に立てればと思っております。
その中、先日幸運なことに夏休みを頂き、1週間の海外旅行をしてきました。行き先はたまたま先月の当コーナー担当の菅田先生と同じオーストラリアです。色々な動物、特に有袋類に沢山会えるとのことで、行き先を決定。動物園や野生動物ツアーや水族館やと動物三昧の1週間でした。特にカンガルー科の動物は日本における猫と同じくらいそこら中に(といっても木陰で休日のお父さんのようにだらけている姿が多かったですが)いました。
カンガルー等の有袋類は人間と違い、1-2cm,1g程度の新生児を尿道(総排泄孔)から出産します。新生児は自力でお母さんのおなかを這ってポケットの中に移動し、乳首の中から一つを選んで吸い付きます。すると不思議なことにその乳首の先が膨らんで赤ちゃんが離れなくなるそうです!そのままの状態で赤ちゃんは約200日間お母さんの筋肉の動きによって母乳を流し込まれ育っていきます。
この子育て方法は出産の際の出血の匂いで敵に狙われるのを防ぐための独自の進化だそうですが、子が自立するまでお母さんが気を配って赤ちゃんを育てなければいけないことは我々有胎盤類と変わり有りません。妊娠、出産、育児というのはどの生物にも共通した重大かつ大変な仕事で、そんな偉大で神秘的な仕事の手助けをさせて頂いているのは素敵なお仕事だなあ、とそんなことを考えながら、またモチベーションを上げて日本に帰ってくることができたのでした。
今でも病棟にいると1日が過ぎるのがとても早く、気がついたら夜ということがよくありますが、春に比べれば少し余裕もでてきて、患者さんの表情の変化が見えるようになってきた気がします。日々一番嬉しいのは患者さんの笑顔を見られること、患者さんが笑顔で退院されることです。お産をされる、病気が治られるのは患者さん自身のお力だと思いますが、こんな私でも少しでもその手助けをできるよう、日々研鑽を積み、成長していきたいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。