教室員の風景

2017年5月

Master of Public Healthを取得して

ご無沙汰しております、山本です。私事ですが、昨年ロンドン大学衛生熱帯医学大学院を卒業し、公衆衛生修士を取得しました。名前からあるように、国際保健に強い大学院でしたが、私は先進諸国の医療の疫学・統計・医療経済をメインに選択し、卒後はイギリスにいる強みを活かして外から見る日本の妊産婦医療を研究したいと考えています。

自分が学生の頃、公衆衛生というとなんだかぱっとしなくて、何のためにある学問なのかあまり勉強せずに過ぎ去ったのですが、今、勉強すると自分の視野も広がったのか、多量のデータを扱える時代に合ったのか、個々の症例を見ているのとは違ったものが見えてくるのが大変面白く感じました。でも、やはり、問題は現場からでてくるもの、臨床からの視点に寄りすぎて色々理解するのが大変なこともありましたが、その視点だけは忘れないようにしたいと思っています。

今はどの国も適正な医療費、というものと格闘しています。例に漏れず日本も少子高齢化の進行により、これからの医療費の増大という問題は避けて通れません。日本の高い医療水準をなるべく下げずに、医療者の生活も守りながら、適正な医療費を確保するということは可能なのでしょうか。お金の問題は医療だけの世界にとどまりません。少子高齢化へのソフトランディングをどうすればうまくできるか、そのために女性や移民の労働力をどう考えるか、医療の公平性を確保するには何が必要か、などなど、興味は尽きません。その時に産科医療はどう移行していくのか、考えて発信できるようになるのが、今の夢かもしれません。この教室で働き始めたときから自分の力を謙虚に考えろとの忠言とそれでも最大限のチャンスを頂いてきました。夢は夢で終わってしまうかもしれませんが、また新たな目標に少しずつ近づけたらいいなと思っています。

さて、イギリスの卒業式は・・・私から見ると学生さん、卒業おめでとう!というお祝いされるというよりは、この学校で学べてよかったね、学生さん、みたいな気がしました(笑)拍手されて入ってくるのはすでに着席している卒業生でなく先生方で、先生方のガウンの方が10倍くらい派手です。一人ひとり名前を呼ばれて卒業証書を受け取りますが、たまにオーディエンスから囃し立てられる人がいたりして、割とフランクです。色々心配されていた私も、無事卒業できていい一区切りになりました。そのうち日本に帰るぞという決意も新たに、もう一踏ん張りしていきたいと思います。