教室員の風景

2020年1月

産科救急
 現在、日本においては、大きく分けて以下の3つの産科救急の講習会がそれぞれ連携しながら開催されており、これらの講習会が普及するに伴って、母体死亡の最多の原因である出血による母体死亡が減少してきています。

J-MELS
…日本母体救命システム普及協議会 (J-CIMELS: Japan Council for Implementation of Maternal Emergency Life Saving System)は、日本産婦人科医会、日本産婦人科学会、日本周産期・新生児医学会、日本麻酔科学会、日本臨床救急医学会、京都産婦人科救急診療研究会、妊産婦死亡症例検討評価委員会の7団体共同で2015年7月に設立され、日本看護協会、日本助産師会、日本助産学会が協賛団体として参加している。

ALSO-Japan
…1991年にACLSとATLSに基づいて、ウィスコンシン州で考案、1993年にAmerican Academy of Family Physiciansによって認可され、全米における分娩に関わる医療プロバイダーがALSOの受講を義務付けられている。日本では、2008年に金沢大学の周生期医療専門医養成支援プログラムグループがAmerican Academy of Family Physiciansから日本でのALSOセミナー運営権を取得し、2008年11月に初めて開催された。2009年4月よりNPO法人周生期医療支援機構がALSO-Japan事業として運営している。

PC3 (ピーシーキューブ)
…Prerinatal Critical Care Courseは、妊産婦に起こる突然の心肺停止や急変に対して確実な初期診療や蘇生を実施することにより、ひとりでも多くの命を救いたいという想いから開発され、ピーシーキューブ運営協議会 (りんくう総合医療センター産婦人科内) が中心となって開催されている。

※上記はそれぞれの運営組織HPより一部抜粋

 上記3つの講習会の1つであるALSOプロバイダーコース in OSAKA 2019が2019年12月7・8日にりんくう教育研究棟 泉州南部卒後臨床シミュレーションセンターで開催され、私、山田一貴もスタッフとして参加しました。本コースは、主催がOGCS (産婦人科診療相互援助システム)、共催が大阪府医療人キャリアセンターおよびNPO法人周生期医療支援機構で、大阪府内の卒後10年目までの勤務医 (産婦人科医のみでなく救急医も)が参加されていました。今回は、りんくう総合医療センターのすぐ横にある施設での開催でもあり、PC3インストラクター資格を有するALSOインストラクターも複数おられ、産科救急の初期対応についても非常に充実した講習会でした。写真は、ご存じの方も多いかと思いますが、NPO法人周生期医療支援機構理事長で本コースディレクターの新井 隆成先生と『コウノドリ』のモデルでりんくう総合医療センターの荻田 和秀先生です。
 ALSOプロバイダーコースは講習会の最後に筆記試験と実技試験があり、今回は大阪府内の若手医師のみに限定された参加ということもあってか、成績優秀者の発表がありました。本コースには、滋賀医科大学医学部産科学婦人科学講座の医局員 (大阪府内における周産期医療で有数の病院に勤務) も参加しており、なんと、その医局員が最優秀成績者となって表彰されました。しかも、その医局員自身が妊婦でありながらの快挙に、表彰されている後輩の姿を見て密かに誇らしく思っておりました。もう片方の写真はその時のものです。

 滋賀県における産科救急は、他の自治体と比しても優れて整っているわけではないのが現状です。しかし、滋賀県内とその他の自治体の産婦人科医、救急医、麻酔科医、助産師、看護師、救急救命士、など多くの方々の日々の診療と活動によって着実に向上してきています。滋賀医科大学は滋賀県に存在する唯一の医学部を有する大学です。滋賀県の産科救急において、滋賀医科大学医学部産科学婦人科学講座が大きな役割を果たし、その向上のための活動を牽引していきたいと考えております。
 2020年2月には滋賀県産婦人科医会が初めて主催するJ-MELSプロバイダーコースが開催されます。将来的には、ALSOやPC3についても開催していきたいと考えておりますので、ご興味のある方は是非とも一緒に活動していきましょう。