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滋賀がん・生殖医療ネットワークの概要
がん患者さんの妊孕性温存治療は、一般に患者さん、がん診療従事者、妊孕性温存施設の生殖医療者の三者が協力して行われますが、滋賀がん・生殖医療ネットワークでは、この三者を効率的に結びつけるため、呼びかけ施設とがん妊孕支援科を設置しネットワークの運営にあたります。(表1)
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呼びかけ施設
滋賀がん・生殖医療ネットワークの呼びかけ施設は、滋賀医科大学産科学婦人科学講座および滋賀医科大学内の有志です。呼びかけ施設は、ネットワーク構築と運営を中心的に担う施設であり、ネットワーク構築の際には、がん妊孕支援施設、妊孕性温存施設の登録を行い、これらの登録施設の一覧表を作成します。また、滋賀がん・生殖医療ネットワーク説明用DVD(がん患者さんの妊孕性に関する基礎知識、がん生殖医療ネットワークについて・患者さんへの対応方法、滋賀の場合 の3部構成の内容を提示)、患者用リーフレット「がん治療と妊よう性について」、「男性患者さんの妊孕性温存のためのアルゴリズム」、「女性患者さんの妊孕性温存のためのアルゴリズム」、登録施設一覧表などの資料を作成し、インターネット上で配信します。これにより患者さん、がん診療従事者、妊孕性温存施設の生殖医療者が作成した資料を自由に使用できるようにします。
がん妊孕支援科
がん妊孕支援科は、呼びかけ施設の要請、又は、自主的な参加意思により滋賀がん・生殖医療ネットワークに登録されます。がん妊孕支援科は、自施設内の医局会や研究会でDVD上映や資料配布などを行い滋賀がん・生殖医療ネットワークに関する情報を提供します。また、実際、がん・生殖医療の必要な患者さんが現れ、原疾患治療の診療科から要請があった場合は、協議・相談し、患者さんのリスクを評価し情報提供を行います。
妊孕性温存施設
妊孕性温存施設は、呼びかけ施設の要請、または、自主的な参加意思により滋賀がん・生殖医療ネットワークに登録されます。登録されると施設名とともにその施設で可能な診療内容も一覧表に掲示されます。妊孕性温存施設では、患者さんへの具体的な方法やそのリスクなどの情報提供と適応の有無につき判断し、必要に応じ妊孕性温存治療を行います。
がん診療従事者
がん診療従事者は、医師のみではなく、がん治療に関わるすべての医療従事者をさします。米国臨床がん学会(ASCO)ガイドライン2013にもあるように、がん治療に関わるすべての医療従事者にご利用いただきたいと考えています。入会、登録等の手続きは不要で、ネットワークの資料・システムを自由にご利用いただけます。
患者さん
患者さんも、入会、登録の手続きは不要です。ご自由に滋賀がん・生殖医療ネットワークの資料をダウンロードし、システムを使用していただけます。
がん患者さんは、これらの資料を利用して、ご自身、がん診療従事者と伴に、あるいはがん妊孕支援科医師などと伴に、不妊リスクを評価し、必要に応じ妊孕性温存施設を受診することとなります。そして妊孕性温存施設で必要な処置がなされた後、がん診療従事者のもとに戻りがん治療を開始、または再開するという流れになります。
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滋賀がん・生殖医療ネットワークの特徴
滋賀がん・生殖医療ネットワークの英語表記は、OncoFertility Network associated with Shiga University of Medical Science(通称OF-Net Shiga)です。これは呼びかけ施設が、滋賀医科大学産科学婦人科学講座および滋賀医科大学内の有志連合であるためです。当然、滋賀を中心とする医療情報・施設情報を患者さんと医療者で共有するという意味がありますが、滋賀がん・生殖医療ネットワークの冠としてついている滋賀は、地方自治体である滋賀県を意味するものではなく、呼びかけ施設が滋賀医科大学であることを意味しています。
このネットワークでは、がん妊孕支援科の働きにより、DVDやリーフレットを用い医療施設に情報を広げるため、がん妊孕支援科のある施設においては、医療従事者は学会や研修会に参加しなくても自施設内でがん・生殖医療の情報を得ることができます。
また、インターネットからダウンロードして得られる情報を医療者と患者が共有するため、多くの患者さんに情報を容易に提供でき、また、経費も安くすむと考えられます。
以上のような特徴があると考えています。
大きながん・生殖医療ネットワークの構築へ向けて
我々のネットワークシステムは、ひとつの呼びかけ施設が中心となり、医療情報・施設情報を患者さんと医療者へ提供すること目的としたネットワークです。このためネットワークを容易に構築することができます。また、どの施設も呼びかけ施設となることができ、どの地域でも、どのような規模でも構築することができます。例えば、開業不妊クリニックも呼びかけ施設になることが可能であり、また、ネットワークの大きさも県境を超えることや、ある地方自治体の一部の地域を中心に構築することもできると考えます。
これらのことから我々のシステムを他の地域のネットワーク化の際に、ご利用いただきやすいと考えています。その場合には、我々のネットワークと新たに形成されたネットワーク間で情報を容易に共有することができ、さらに大きなネットワークを構築できると考えています。
今回の我々のネットワークは、その構築に際し日本がん・生殖医療研究会から多くのご助力を賜りました。日本全体のつなぐ大きなネットワークの必要性は誰しもが感じはじめています。日本産科婦人科学会や日本がん・生殖医療研究会などが中心となり、いずれ日本に大きなネットワークが構築されると考えますが、その際に、我々のネットワーク構築から得られた経験が、少しでも役にたてばよいと考えております。
ご意見、お問い合わせは、下記事務局までご連絡下さい。
【事務局】
滋賀医科大学医学部附属病院産科婦人科内
〒520-2192 大津市瀬田月輪町
E-mail:ofnshiga@belle.shiga-med.ac.jp
FAX:077-548-2406
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滋賀 がん・生殖医療ネットワーク(OF-Net Shiga)
設立の背景と目的
がん診療の進歩によりその治療成績は向上し、がんを克服した患者さん(がん生存者)が増えています。これは非常に喜ばしいことですが、その一方で手術、放射線照射、化学療法による影響で妊娠することができなくなり、自らのお子さんを得ることができなくなる患者さんも少なくありません。このことは、がん生存者につきつけられる非常に悲しい現実であり、大きな問題です。
このような中、生殖医療の発展により、がん治療前や治療中に生殖細胞を凍結し、がん治療後に妊娠する力が損なわれた場合の予備として保存しておく試みがなされています。2003年には、悪性腫瘍治療前に卵巣組織の一部を凍結保存しておき、悪性腫瘍治療後、凍結しておいた卵巣を融解し体内に戻し、その卵巣から排卵した卵子により妊娠・出産した患者さんが、世界で始めて報告されました。この分野が、医療として大きく注目されるきっかけとなりました。2014年末までに世界で41人の赤ちゃんが、この方法により生まれています。また、体外受精技術を用いた卵子凍結も、多くの患者さんに提供できる妊娠する力(妊孕性:にんようせい)を保存できる方法です。日本国内でもこの手法を用い赤ちゃんが誕生していることは、すでに新聞やニュースで報道されています。
以上のようにがん患者さんの妊孕性を維持する医療(がん・生殖医療)が発展してきていますが、この医療を推進して行く上で解決すべき課題があります。その一つに患者さんへの情報提供があります。がん治療において患者さんの窓口となるのは、がん診療従事者です。しかしながら、がん診療従事者が、妊孕性温存の方法、所要日数、リスクなどの情報を患者さんに提供し、対応を考えることは困難であると考えます。これは、がん診療従事者が普段行っている診療とは異なる内容の情報を患者さんに提供しなければならないためです。このようなことから、容易にがん治療の必要な患者さんの不妊に陥るリスクを評価でき、妊孕性温存施設の生殖医療者に相談でき、生殖医療者から患者さんへの情報提供と必要に応じがん・生殖医療が行えるようなシステム構築が必要であると考えました。
今回、滋賀がん・生殖医療ネットワークを開設しますが、これは滋賀を中心にがん・生殖医療に関する情報を提供し、がん患者さん、がん診療従事者、妊孕性温存施設の生殖医療者を啓発し、がん患者さんの妊孕性維持を効率的に図ることを目的としています。
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ネットワークのご利用方法
患者さん >>
患者さんは、入会、登録の手続きは不要で、自由に滋賀がん・生殖医療ネットワークの資料をダウンロードし、システムを使用していただけます。
がん診療従事者 >>
がん診療従事者は、医師のみではなく、がん治療に関わるすべての医療従事者をさします。米国臨床がん学会(ASCO)ガイドライン2013にもあるように、がん治療に関わるすべての医療従事者にご利用いただきたいと考えています。入会、登録等の手続きは不要で、ネットワークの資料・システムを自由にご利用いただけます。
患者さんが直接ご利用される場合

患者さんが、直接、滋賀がん生殖医療ネットワークを使用する場合を説明します。まず、「がん治療と妊よう性について」と登録施設一覧表をダウンロードしてください。「がん治療と妊よう性について」の記入欄にご記入いただき、使用薬剤や放射線量がわかっている場合は、ご自身で不妊リスクの評価を行っていただけます。使用薬剤や放射線量など分からないことがある場合は、①「がん治療と妊よう性について」を持って、がん治療の担当医(がん診療従事者)に相談していただくのが最もよいと考えます。がん治療の担当医とリスク分類をいっしょに行ってください。中間(中)から高リスク、低くても温存希望あり、詳しく妊よう性温存の話を聞く希望がある際には、登録施設一覧表から自分に適すると考えられる施設を選択いただき、妊孕性温存施設を紹介受診いただくことになります。
そのほかの方法として、②ご自身の判断で、がん妊孕支援科を受診していただく、また、③ご自身の判断で、妊孕性温存施設を直接、受診していただくことも可能と考えます。②と③の場合は、がん妊孕支援科や妊孕性温存施設の医師からがん治療の担当医(がん診療従事者)に治療計画を問い合わせ、その後、いっしょにリスク評価し対応を考えることとなります(ただし、すべての患者さんの妊孕性を温存できるわけではありません。患者さんの病状等により妊孕性温存が適さない場合もあることはお含み下さい)。
なお、がん・生殖医療および滋賀がん・生殖医療ネットワークのご理解を深めていただくために「OF-NETがん・生殖医療ネットワーク説明用DVD」の音声入り画像をご用意しました。ダウンロードしてご視聴ください。(ご視聴いただいた方は、 ofnshiga@belle.shiga-med.ac.jp までご意見をいただければ幸いです。どうぞ宜しくお願い申し上げます)
患者さん用ダウンロードはこちらからどうぞ
がん診療従事者がネットワークを利用される場合

「がん治療と妊よう性について」、登録施設一覧表、「男性患者さんの妊孕性温存のためのアルゴリズム」、「女性患者さんの妊孕性温存のためのアルゴリズム」などの資料をダウンロードしてください。
最も重要なのは、最初に患者さんに妊孕性温存希望があるかどうかを質問することです。このステップがあるかどうかにより、大きく患者さんの運命は変わります。①「がん治療と妊よう性について」を用い患者さんとともに不妊リスクの評価を行います。あるいは、②がん妊孕性温存協力診療科に相談後、不妊リスクの評価を行っていただきます。その後、「男性患者さんの妊孕性温存のためのアルゴリズム」、「女性患者さんの妊孕性温存のためのアルゴリズム」に従って患者さんとその後どうするか決めていただきます。必要のある場合は、妊孕性温存施設へ紹介いただくことになります。また、③患者背景が複雑な場合などは、患者さんの妊孕性温存希望を確認した後、最初から妊孕性温存可能施設へ紹介することも選択肢となります。また、④滋賀医科大学医学部附属病院母子・女性診療科では「がんや自己免疫疾患などの患者さんの妊孕性温存外来」(通称 がん・妊孕外来)を開設していますので、患者支援センターを通じてご紹介いただくことも可能です(ただし、すべての患者さんの妊孕性を温存できるわけではありません。患者さんの病状等により妊孕性温存が適さない場合もあることはお含み下さい)。
なお、がん・生殖医療および滋賀がん・生殖医療ネットワークのご理解を深めていただくために「OF-NETがん・生殖医療ネットワーク説明用DVD」のパワーポイントファイルをご用意しました。ダウンロードしてスライドショーでご視聴ください。(ご視聴いただいた方は、 ofnshiga@belle.shiga-med.ac.jp までご意見をいただければ幸いです。どうぞ宜しくお願い申し上げます)
がん診療従事者用ダウンロードはこちらからどうぞ
- がん治療と妊孕性について(PDF)>>
- 登録施設一覧表(PDF)>>
- 女性患者さんの妊孕性温存のためのアルゴリズム(PDF)>>
- 男性患者さんの妊孕性温存のためのアルゴリズム(PDF)>>
- OF-Net がん・生殖医療ネットワーク説明用画像(ダウンロード)>>
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会則
(名称)
第1条 本会は、「滋賀がん・生殖医療ネットワーク」と称する。
(目的)
第2条 本会は、滋賀県を中心にがん・生殖医療に関する情報を提供するとともに啓発し、若年がん患者の妊孕性温存を図ることを目的としている。
(構成・会員)
第3条 本会は、本会事務局、がん治療施設におけるがん・生殖医療を支援する部署(以下、がん生殖支援部署)、がん診療従事者、妊孕性温存施設における生殖医療従事者、がん・生殖医療を必要とする患者、および本事業に関与するその他の者により構成される。
• 事務局は、滋賀医科大学産科学婦人科学講座および滋賀医科大学内の有志で構成する。事務局は、本会の運営、施設登録・公開・資料作成を担う部署である。本会の代表、幹事長は、事務局より選出され、運営・活動を統治する。
• がん生殖支援部署は、本会事務局の要請、または自主的な参加意思で登録される。登録によって本会のがん妊孕支援施設一覧表に施設名・部署が掲示される。がん生殖支援部署は、当該医療施設内で本会の情報を提供するとともに、がん診療従事者と共同し患者に情報を提供する。
• 妊孕性温存施設は、本会事務局の要請、または自主的な参加意思により登録される。登録によって施設名・診療内容が施設情報一覧に掲示される。妊孕性温存施設では、生殖医療従事者より患者への情報提供と、必要に応じ妊孕性温存を行う。
(事業)
第4条 本会は、第2条の目的を達成するために次の事業を行う。
• がん・生殖医療に関する情報、がん生殖支援部署および妊孕性温存施設の一覧を、がん・生殖医療を必要とする患者・医療者に提供する。
• 国内学会や滋賀県内の学会・研究会・講演会等を通じ情報提供、臨床成果を発表する。
• 会員相互の情報交換を行う。
• 関連する学会やネットワークと交流する。
• その他、本会の目的を達成するため必要と考えられる事業を行う。
(役員)
第5条 本会に次の役員をおく。役員は本会の運営に必要と考えられる会員を役員に推薦する事ができる。
代表 | 1名 | 本会を総括する |
---|---|---|
幹事 | 複数名 | 代表の管理下に、本会の活動に必要な業務立案と遂行を中心的に担う機関として、幹事会を設置する。幹事は、幹事会を構成し、本会の活動に必要な業務の立案と遂行を行う。 |
幹事長 | 1名 |
幹事会のとりまとめを行う。 幹事会を招集する |
監事 | 2名 | 本会を監査する |
アドバイザー | 複数名 | 本会の発展のため活動に助言を与える。 |
(運営)
第6条 本会の運営は、幹事会を中心に行う。
• 代表は、本会の運営に関する日常業務を幹事会に指示し、その運営を遂行することができる。
• 役員は、重要案件に関して幹事会の招集を代表に要求することができる。(1)幹事会にて決定後、代表の承認を得て本会の最終決定とする。(2)幹事会は、幹事の過半数の出席・委任をもって成立することとする。(3)欠席者は委任状を提出することにより、審議内容を委任者に一任することができる。
• 代表は必要に応じて幹事会に出席するものとする。
• 監事は必要に応じて幹事会に出席するものとする。
• 幹事は、必要に応じアドバイザーに助言を求めることができる。助言を求められたアドバイザーは、原則として幹事会に出席するものとする。
(会計)
第7条 本会の経費は、滋賀医科大学産科学婦人科学講座の運営費、科学研究費、寄附、その他の収入を充てる。
(1)会員の年会費は不要である。
(2)本会の会計年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとする。
(会則の変更)
第8条 会則の変更は、幹事会の過半数の賛成により変更できる
(事務局)
第9条 事務局は代表のもとに会員名簿の整理、研究会の運営に必要な諸事務を行う。本会の事務局は、滋賀医科大学附属病院産科学婦人科学講座内に置く。
〒520-2192
大津市瀬田月輪町
TEL (077)548-2267
FAX (077)548-2406
E-mail: ofnshiga@belle.shiga-med.ac.jp
付則
本会則は2015年7月7日より施行される。
改訂
2022年11月1日
役員の構成
代表 | 滋賀医科大学産科学婦人科学講座教授 | 村上 節 |
---|---|---|
アドバイザー | 滋賀県がん患者団体連絡協議会会長 | 菊井 津多子 |
滋賀県健康医療課がん・疾病対策室主席参事・県立成人病センター副院長 | 鈴木 孝世 | |
滋賀県健康医療福祉部次長 | 角野 文彦 | |
滋賀県健康医療福祉部健康医療課 | 嶋村 清志 | |
市立長浜病院放射線治療センター長・がん対策推進事業部副管理監・がん相談支援センター長 | 伏木 雅人 | |
幹事 | 滋賀医科大学総合外科学講座教授 | 目片 英治 |
滋賀医科大学医学部附属病院腫瘍センター特任助教 | 河合 由紀 | |
滋賀医科大学医学部附属病院腫瘍センター副看護師長 | 田﨑 亜希子 | |
滋賀医科大学医学部附属病院腫瘍センター看護師 | 尾崎 由佳 | |
日野記念病院乳腺外科医長 | 糸井 尚子 | |
滋賀医科大学医学部附属病院消化器内科特任助教 | 園田 文乃 | |
東近江医療センター産婦人科医長 | 郭 翔志 | |
滋賀医科大学医学部附属病院女性診療科助教 | 竹林 明枝 | |
幹事長 | 滋賀医科大学産科学婦人科学講座准教授 | 木村 文則 |
監事 | 滋賀医科大学医学部附属病院小児科講師 | 多賀 崇 |
滋賀医科大学医学部附属病院血液内科講師 | 木藤 克之 |